ドイツ政治的ロックのなかでも最もよく知られたバンドのひとつ。日本でもそのシアトリカスさ、アヴァンギャルドさによって、プログレッシブ・ロックのカテゴリーにおいても有名なバンドであり(OHRレーベルから出てたというのもあるかも)、PolitRock陣では珍しく『ジャーマンロック集成』でも紹介されている。Cologne大学の学生によって1966年に結成されたラディカルなパフォーマンスグループが母体となり、Floh de Cologneが生まれた。そしてDieter Sueverkrupとともに1stアルバムのVietnamを製作。このころからカヴァレット、演劇、パフォーマンス、アジテーション等を独自にミックスさせたライヴを行ない、それはカヴァレット・ロックと呼ばれた。その歌詞は政治的主張とユーモアとが混在した独特なものであり、ドイツ語が理解できないとただ猥雑なだけにも聞こえかねず、彼らの面白味は半減するやもしれない。それゆえにプログレフィールドにおける彼らの評価は正当とはいえないだろう(とはいえ、フランク・ザッパとの比較はまさに的を射ていると思う)。その後の様々な社会批判、資本主義批判、ファシズム批判のアルバムを発表。2作目から5作目までのアルバムはOhrレーベルからの発売、それ以外はすべてPlaeneRecordからの発売である。Ohr時代のアルバムについては僕は未聴。1975年のTilt!の後、今まで政治的な歌詞を書いてきたGerd Wollschonが脱退。そのために政治的コンセプトは弱体化、バンド自体も失速していったと言われる。だがそれはメインライター脱退が原因というよりも、もはや社会において政治の季節は終わり、彼らのよって立つ思想的基盤が弱まったことによるのではなかろうか。1983年にバンドは解散。Sueverkrupとともに解散コンサートを行なったそうだ。
Profitgeier (1971) (Spalax)
3nd アルバム。OHRレーベルから発売。再発CDはSparax(仏)とZYX(独)から出ている(私の持ってるのはSpalax盤)。ハゲタカの腹がナイフで割かれ、血を流しているジャケットは、オリジナル盤では内臓が見える変形ジャケットだったらしい。それはともかく「ロックオペラ」と記載されているが、相変わらずのカヴァレット・ロック。いまいちキレのない演奏、アジか歌か分からないような歌、演劇調の構成、どう聴いても彼らならではの音だ。1stは共同名義ってこともあってかSueverkruep色が強かったが、このアルバムはバンドの音になっている。オルガンが結構目立つが、後のアルバムに比べると音も素朴で平板な印象を受けた。作詞はFloh de Cologne名義。記事、発言等々の引用や固有名詞が入り乱れていて、読んでも理解し難いが、資本主義批判を繰り広げているようだ。内ジャケには歌詞がびっしり記載されているが(歌詞読むのしんどい)、歌われているのは一部のみであり、抜粋して録音したようだ。(でもSpalaxって結構いいかげんな再発をするから、もしかするとSpalaxが勝手にやったってことはないか?まあ、いくらなんでもそこまではしないか)。
Mumien (1974) & Vietnam (1968) (Plaene88779)
70年代チリにおいて社会主義国家建設を目指したアジャンテ政権は、1973年ピノチェト議長によるクーデターによって短期間で崩壊。アジャンテは虐殺され、その後軍部独裁が続くことになる(1990年まで)。さて、こういった政治状況をテーマにした「ロックバンドのためのカンタータ」がこのアルバムである。さて、タイトルのMumien(ミイラたち)というのは、「古い体制思想にしがみつく没落しつつある階級」(つまりブルジョワジー)の事であるそうな。ここでは、もちろんピノチェト政権とその支持者たちのことを指している。このアルバムはその当時の新聞、雑誌、語録等様々なメディアの引用を歌詞に織り交ぜながら、Floh de Cologneの本領に物悲しくかつ力強い雰囲気で統一されている。ヴォーカルも、上手くはないが、音とともに言葉を聴かせるという趣旨においては成功している(ほとんどが語り調、アジテーション調だしね)。また、ヘビィなオルガンに哀愁メロディの、僕はどことなくJ.A.シーザーを思い起した部分もある。なお、ガルシア=マルケス著『戒厳令下チリ潜入記』をあわせて読むと状況がよく分かる。反体制詩人ネルーダの詩もお勧めだ。また、同時収録はVietnam。ファースト・アルバム。タイトル通りにベトナム戦争をテーマとしたアルバム。このアルバムは、Floh de Cologne & Dieter Sueverkruep名義になっている。Sueverkruepは左翼的シンガーソングライター。PlaeneRecordから何枚かアルバムを出している(1848 Lieder derdeutschen Revolutionという1848年ドイツ革命の頃の詩に彼自身が曲をつけて歌った名盤がある)。Vietamでも数曲彼がヴォーカルをとっている。ロック色は薄く、まさに演劇的。モノローグ、ディアローグ、アジテーション、合唱、室内楽、ユーモアとコミカルさに満ちた歌、皮肉と批判等々に満ち満ちた独自の空間が開かれている。どちらかというとSueverkruep色の強い作品だ(特に歌の部分)。 なお、このアルバムの利益はベトナム救済基金とやらに寄付されたそうだ。