lacrimosa


Lacrimosaは日本盤がでているおかげで(といっても輸入盤に解説・訳詞+帯つけただけ)日本でもよく知られているバンドです。基本的にはヴォーカルとキーボードのTilo Wolffのワンマンバンドといってもいいでしょう。彼が作曲と作詞をしています。  "Inferno"以降ヴォーカル兼キーボードのAnne Nurmiが加入して以来、双頭バンドという趣きもでてきました。また、彼女の加入以降英語詩の曲がレパートリーに入ってきたというのも見逃せない点です。音的には一応ゴシック・メタルに分類されているようです(日本盤の帯などにはそう書かれている)、近作になるにつれメタルの要素が強くなってきているようです(ドラムとかギターとか)。個人的には初期の方が好みです。ピアノの美しくもスカスカな分散和音や哀愁のメロディを奏でるバイオリンが心に染みます。最近のかっちりして強弱のメリハリのついた音より、たらたらとどこへ堕ちて行くか分からないようなメリハリがなく、そして盛り上がったのか盛り下がったのか分からないようなじわじわと染みてくる雰囲気がわたしには合っているようです。Tiloのヴォーカルは上手というわけではないけれど、逆に曲のめりはりのなさげな雰囲気にぴったりだし、哀愁があってよいと思います。(などと思っていたら、90年代末からはシンフォ色がいっそう強くなり、しまいにはオーケストラを使って、ロックオペラアルバムまでつくってしまいました)。 ジャケットは非常によく音を表わしていると思います。毎回同じピエロのキャラクターを使い(これはバンドのロゴにもなっている。Tilo自身の象徴でしょう)、暗く哀愁の漂うものとなってます。またジャケット内にあるTiloとAnneの写真がSM的ムードで何とも妖しく良いです。ライブはシアトリカルだという話だけど、SMショーでもやるのか?ぜひライブを見たいものです。Goethes Erbenは可能性なさそうだけど、このバンドは日本盤でているので可能性はあります。ぜひ来日してほしい。

■アルバム
image Einsamkeit (1992)
ジャケットに描かれたおなじみのピエロは、今回は砂漠に独りぽつんと座ってなんとも切ない様子です。タイトル通り「孤 独」がテーマの連作、ほとんどコンセプトアルバムといってよいでしょう。Tiloはヴォーカルとピアノとキーボードとドラムを担当しています。まだAnneはまだ加入していないので、ヴォーカルは彼のみです。ギターよりもピアノの方が印象的で、ピアノの厚みのかけらもないスカスカな音がなんとも泣かせてくれます(こうゆう嘘くさい音空間にわたしは弱いのですよ)。歌詞には生と死、孤独と愛、血、恐怖、光と闇といった言葉が頻出し、自己卑下とコミュニケーションの不在、そして悲しみを通り越した偽りの静寂が歌われています。あいかわらず暗く悲しい歌詞で、まさにLacrimosa世界は構築されています。これ以降、音はだんだんと重厚に、かつ様式化され完成度は増してきますが、歌詞の基本コンセプトはまったく変わっておりません。ちなみに彼らのアルバムではこれが一番好きです。
image Inferno (1995)
ボンテージ・ファッションに身を包んだ(露出した?)SMの天使がジャケットです。ピエロがTiloなら、このボンテージ天使はAnneですね。背景は近代的都市と古代都市が融合したような妖しい世紀末的都市風景。ピエロはどこにいったんじゃ、とよく見ると、ビルのベランダ?でバイオリン弾いてます。とても小さいので目を凝らして見ないと分かりません。でも、Tiloのヴォーカルの比重が小さくなったというわけではなく、ヴォーカルの中心は彼で、それに時々Anneが絡んでくるという感じです。このアルバムから英語の歌詞の曲が入ってきました(4曲目と7曲目)。これはAnneの資質なのか、それともインターナショナルな市場を意識してのことか。ま、両方ですかね。ギターのリフがメタルっぽくなり、 "Einsamkeit"とはかなり異なった印象を受けます。ドラムも専任の人(元Running Wildの人らしい)が叩くようになり、非常にアグレッシブになりました。ちなみに私が最初に聴いたのはこのアルバムです。
image Stille(1997)
無人の舞台に立つピエロの後ろ姿のジャケット。SM天使はいないのかと思いきや、ジャケット後ろに描かれた、舞台の幕脇の舞台裏へと通じると思しき階段に立ってました。一安心ですな。音は前作の延長ですが、現時点での最新のスタジオアルバムというだけあって、さらにダイナミックに、さらにシンフォニックに、さらにメリハリのついたものとなっています。一曲目からオーケストラや合唱隊を使って、もろシンフォニック・ロック的です(ギターはメタルっぽいけど)。この物量作戦の大袈裟度からして彼らの最高傑作という評価も妥当でしょう。 この次のアルバムはライブ・アルバムです。
image Elodia (1999)
2枚組ライブ盤発売1年にしてお目見えしたニューアルバム。ここんとこのバンドの方向性を見ていると予想はついたが、いつかはやるだろうと思っていた、オーケストラを大々的に使った三幕構成のロックオペラ。メタル色は薄まってきて、もはやゴシックメタルというよりシンフォというべきアルバムだ。初期のNW色はもはや無し。実際国内盤帯には「メタル」の文字はなく、「シンフォニック・ゴシック」とカテゴライズされている。ロックオペラアルバムを作ることはをTiloの長年の夢だったそうであり、ロンドン・シンフォニー・オーケストラの参加によってついに実現。重厚、荘厳、耽美な世界を現出せしめている(それにしても、なんかの雑誌で、Kansasが「Always never the same」の時、ロンドン・シンフォに頼んだのは、予算の都合だと書いてあったが、ここは安いのか。アニメ音楽でオケを使う時はなぜかワルシャワ交響楽団が多いがそれも同じ理由なのか?謎は深まる)。しかし、ここまで構築性を極めてきたならば、次の手をどう出すがが難しいと思う。Lacrimosaにとって、このアルバムが転機になるかもしれない。国内盤はAVALONレーベルからの発売なので、ごく普通のレコード屋でも入手可能。国内盤はボーナス2曲入り。

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