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novalis
「青い花」で有名なドイツロマン主義の詩人の名を借りたバンド名の通り、「ロマン派ロック」の巨匠。彼らは、ドイツ・シンフォロックを語る上では絶対に欠かせないバンドだ。71年ハンブルクにて結成。初期の頃はアルバムごとに必ず一曲は詩人ノヴァーリスの詩を歌詞に使っていた(後期にはやめた)。デビューアルバムであるBanished Bridge のみ英語詩のアルバム。多くのドイツのシンフォ・バンド同様、テクニックて聞き惚れるバンドではなく、逆に歌心を軸として、たゆたう物憂げな雰囲気をそこはかとなく聴かせてくれるバンドだと思う。大曲がなくなった後期の作品などはまさにその心がよく現われている。一般には3枚目のSommer Abend が最高傑作とされているが、それはこういった雰囲気がよく表われているからだろう。85年ころまで活動していたようだ。
■アルバム
Novalis (1975)
2枚目のアルバム。英語詞をやめて、ドイツ語を使い始めます。音楽も、ブリティッシュ・オルガン・ロックの影響が大であった前作から大きく変わり、ここからがほんとの意味での「ロマン派ロックバンド」ノヴァーリスの始まりと言えましょう。聴く所は2曲め、4曲め、5曲めあたりでしょうか。どれもトラッド的な旋律に、じわじわと盛り上げて夢幻的な雰囲気を作り出す鍵盤楽器、そしてここぞという時に目立って胸を焦がしてくれるギターといった典型的なノヴァーリスのリリカルな、悪く言えば弱々しい曲です(ヴォーカルもなよっとしてるし、あんまりうまくないけど、そのために曲にぴったり)。5曲目の歌詞は詩人ノヴァーリスの詩を元にしています。
Sommerabend (1976)
一曲めはインスト。3曲めは詩人ノヴァーリスの歌詞を元にしている。1曲目、2曲目は、ほとんど盛り上がることもなく、たんたんじわじわとした演奏がつづく。とりたてた技巧もない。だが、それが夏の夕方のはかなげな印象を呼び起こす。小川のせせらぎ、森を通り過ぎる風、木葉のささめき、そして、姿を見せる牧神たち。本アルバムのメインといえる3曲目、そのラスト近く、唐突に「ぎゅいぃーん」と盛り上がるのは個人的にはいただけない。今までの憂えた静けさが台無しだ。以前、国内盤で発売された時のタイトルは「過ぎ去りし夏の幻影」。いい邦題だ。
Brandung (1977)
ヴォーカリストとしてFred Muelblockが加入し5人編成となり、さらに表現豊かになった5枚めのアルバム。ノヴァーリスの詩を元にした「Astralis」「Wenn nicht mehr zahlen und figuren...」は彼の作曲であり、より力強く、よりタイトに、より華やかになった印象を受ける。Novalis節が響き渡る1曲め、どっかで聴いたことあるような2曲め、湿度低めの3曲め等々も良いが、一番の聴きどころはなんといっても旧B面すべてを使った4部構成の「Sonnenwende」(夏至/冬至)だろう。奢り高ぶる人間の終末と再生を神話的ヴィジョンを用いて描いた傑作だ。ライナーにはMuelblockのヴォーカルが好き嫌いを分けると書いてあるが、線細いながらもアグレッシブな歌いっぷりは、特に第4部「Daemmerung」における昂揚感をいっそう盛り上げてくれる。Novalis自身にとっても新しい始まりを宣言するアルバムといえるだろう。
Augenblicke (1981)
個人的には一番好きなアルバムです。白猫黒猫のジャケットがとても印象的で、LPサイズで観たいものです。以前の大曲主義から一転して、このアルバムには小曲が8曲収録されていますが(歌ものとインストゥルメンタル曲が約半分づつ)、一曲一曲が短くなった分、それぞれの曲のよさが引き立っています。ポップな感じの曲も増えましたが、相変わらずノヴァーリス節とでもいうべき湿度があって、突き抜けることはありません。3曲ある叙情的ヴォーカル曲はどれも絶品だと思います。ピアノで始まる7曲目などはこれまでにない洗練された旋律で、哀しげなフルートからギター・ソロへの展開の部分は、ふとページェント(日本のプログレバンド)を思い起こしました。
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